読書

遠まわりする雛

順番で言うと先日書いた愚者のエンドロールの後にクドリャフカの順番が来ますが、読み終えた後の読後感はこちらの方が良かったので、先に書きたくなりました。 主人公たちの一年のエピソードを抜粋しながら追っていく構成になっており、正直最初の方の話はい…

愚者のエンドロール

犬はどこだにすっかりやられてしまい、シリーズ化されている古典部を読み進めようとシリーズ2作目を読んでみましたが、確かに上手くまとまっています。 制作途中で脚本家に続きを書けない事情が出来、暗礁に乗り上げてしまった映画の脚本の続きを製作する手…

八月の魔法使い

Gainerで連載されていたそうで確かに社内で起きるある意味クローズドサークルの作品だと思います。 ただ同じくGainerに連載されていた東野さんの青春のデスマスク(改題後、ゲームの名は誘拐)に比べると堂々巡りの展開が多く物語が先に進まない印象を受けま…

トリック・シアター

前作プリズン・トリックを読んだときにこれはゲド戦記と同じように見る側に突っ込ませながら読ませる新しい試みの作品だなと思ったものですが、今作もそのコンセプトは引き継がれているようで読んでていて飽きることはありません。 一読しただけでも疑問符が…

月の恋人

上手くまとまっており、よくありそうなドラマの原作にはなっていますが、道尾さんである必要はあったのかと疑問に思ってしまうような内容になっていると思います。 よく言えば道尾さんの新境地と言えるのでしょうが、いつもの道尾色を期待して読むと肩透かし…

天地明察

江戸時代に今まで使われていた暦にずれがあることを知り、正しい暦を幕府や朝廷に認めさせるために奮闘した一人の人物の話ですが、感動します。 この話の不思議なところは普通の話であれば苦労して何か一つのものをやり遂げたときにぐっと来るものですが、こ…

春期限定いちごタルト事件

小市民シリーズと呼ばれる作品の一作目です。 米澤さんが得意とする得意とするいわゆる日常の謎を取り扱っており、器を暖めずに入れられたホットココアや似通った二枚の絵を保管しておくように言われた理由、目印も何もない場所へ決まった時刻へ急ぐ高校生な…

この国。

日本に非常に似通った架空の一党独裁国家を舞台としてそこで反政府舞台と戦う治安警察隊の一人が主人公となっている作品です。 一党独裁体制でありながら、逆に言えば一党独裁だからこそ国家繁栄を目指し、治安の維持を図り、言論の自由を保証し、低い失業率…

氷菓

米澤穂信さんのデビュー作で後に続く古典部シリーズの第一作ともなる話です。 氷菓自体を巡る謎に踏み入っていくラストへの持って行き方はデビュー作でありながら現在の片鱗が見えますが、それ以外の日常の謎に関しては解決の仕方が少し突然な感じがしました…

ワイルド・ソウル

垣根涼介さんは以前、借金取りの王子を読んだときにはいまいち合わないなという感じだったのですが、この作品は素晴らしいの一言に尽きます。 ブラジルへの移民に対する待遇の偽証問題はニュースで見てちらっと知っている程度でしたが、作者の2ヶ月にわたる…

節約の王道

題名に惹かれて借りてみたのですが、正直借りて良かったと思う内容でした。 良い意味ではなく買っていたら金返せと言いたくなるようなと言う意味での借りて良かったですが。 不要な飲み会は行かない、電車より車の方が移動コストは安い、出来合いの調味料を…

グラスホッパー

井坂作品に見られる明るさはほとんど見られず闇の部分を描いた作品だと思います。謎解き的な部分や軽い裏切りはありますが、それよりも主人公の鈴木や鯨の内面を描いた作品なんだろうなと読後には印象を持ちます。 ラストの一行が少しネット上で話題になって…

カッコウの卵は誰のもの

新参者と一緒に借りて読んだ分、粗が目立つというか何というか... 文はいつもの東野作品らしく読み進みやすいですし、興味を持って読めますが消化不良感がありありと。 クロカンの彼の存在価値は何だったんだろうと読み終えた後でも未だに思ってしまいま…

新参者

昨年度のこのミス1位の作品でドラマ化もされていますので今更言及する必要もないと思いますが、面白いというかすごい作品だと思います。 短編を積み重ねて一つの長編とする手法を取っていますが、短編だけ読んでも日常の謎を取り扱った傑作ですし、最後に一…

ラッシュライフ

複数主人公の物語を微妙に絡ませながらも単独でそれぞれの話を読むだけでも十分面白い話が詰まっています。 それぞれの登場人物の時系列が同一でない所がミソで読み進めていくとあの時の出来事の裏にはこういう理由があったのかと驚かされたりもします。 デ…

月の扉

ハイジャックされた機内でハイジャック犯も知らない間に起きた殺人、ハイジャック犯の真の目的、そしてそれを解き明かそうとする名探偵である一般人、といわゆる密室殺人物ではありますが、それを取り巻く環境にひと味ふた味加えることによって一段上の世界…

まっすぐ進め

最近の石持さんの作品は突っ込みながら読むのが自分の中では定番とかしている気がするのですが、本作も読んでいて気になるところが多数あるというか何というか。 主人公の洞察力の鋭さは分かるのですが、その鋭さが状況を好転させればいいのですが、そうでな…

犬はどこだ

個人的には今まで読んできた米澤穂信作品の中ではこれが一番はまる感じです。 風呂敷も広げすぎず、主人公の犬探し屋を営むまでに至った経緯や妹や部下など魅力的なキャラも出てきますし。 少しご都合主義的なところがなきにしもあらずですが、最後の真相は…

完全恋愛

正直文体が古い感じがして個人的にはスムーズに読めたという気はしないのですが、読ませるだけの力はある作品だと思います。 殺人を犯した主人公が助かった真の理由、数千キロを越えて現れた凶器の謎、病気で床に伏せっていた際に起きた殺人のアリバイトリッ…

ガラスの巨塔

プロジェクトXのプロデューサーの方の自伝のような小説でプロジェクトXの成功から凋落、ねつ造問題や自己の窃盗報道に関して書かれています。 確かに読み物としては良くできていると思いますが、如何せん個人的な主観に沿ってしか書かれていないので、読む側…

エデン

ろくに自転車レースを見ていない知識のない自分のような人間にもしっかりとレースシーンの情景が浮かんでくるのは前作サクリファイスと同様で、舞台がツールドフランスとなった本作においてもレースシーンだけでも非常に面白く読めます。 サクリファイスのよ…

同期

今まで名作と呼ばれていても刑事物はあまり自分には合っていないなと感じてきた人間ですが、この作品は面白く読めました。 警察の中での人間関係も描いているものの同期から上司、部間の対立など読んでいる自分の会社でも起きそうな状況に置き換えるとイメー…

悪の教典

若く美形で生徒からも同僚の教師からも信頼の厚い教師である主人公が校内に起きる問題を解決していくところから物語は始まります。 冒頭部だけ読むと学園物というイメージを抱きますが、主人公の問題解決の手段を知っていくうちに全く違った側面を見せ始め、…

オー!ファーザー

陽気なギャングの頃の作風に戻ったのかなと思いながら読んでいたら、実際に書かれたのは2006年のことのようで。 どうりで最近のあるキングやSOSの猿のような奔放さはないはずです。 正直こちらの作風の方が読みやすく、面白い気がするのは私だけでしょうか。…

パラドックス13

ミステリーと言うよりはとある条件下で起きたパニック小説、サバイバル小説という方がジャンル分けでは正しいのかもしれません。 ただそう言う分野ではもっと本職の作家さんはいる気がしますし、なぜそんな状況に陥ったのかの説明やオチも説明不足で唐突感は…

オーディンの鴉

ネットを通じて私生活が漏れるという事件を扱った小説で実際に起こりうるかもしれない身近な事象を取り上げたということで随分と評判は良かったのですが、個人的にはうーんと言う感じです。 たぶん求める物に違いがあるのでしょうが、確かにニコ動やtwitter…

追想五断章

古本屋でバイトをしている主人公がふとしたことをきっかけに来店した女性から父の買いた小説を探してくださいという依頼をされるものの小説で名を売ったような父ではなく、同人誌くらいにしか掲載されていない小説を探すうちに小説に隠された父の真の意図に…

廃墟に乞う

警官の血も読んだことがありますが、何となく自分には合わないようなイメージを抱いてしまいました。直木賞受賞作なのでいわゆるミステリー的な雰囲気を期待して読むのも良くないのでしょうが。 休職中の警官が個人的なつながりから依頼された案件を休職中と…

運命の人

西山事件を取り扱ったいつも通りの世相を斬る山崎作品ですが、沈まぬ太陽のようにモデルとなった人をそのまま描くと言うよりも第4巻の沖縄に関係する部分にかなりオリジナルの部分が入っており、個人的には馴染めませんでした。 山崎さんの作品によく言われ…

さよなら妖精

ユーゴスラビアから来た少女と主人公、それを取り巻く友人達との思い出話をたどりながら物語は進んでいきます。 ユーゴスラビアは6つの共和国から構成される共同体でしたが、そのどこから日本に来ていたのか分からないまま、少女は帰ってしまいます。それを…