悪の教典

若く美形で生徒からも同僚の教師からも信頼の厚い教師である主人公が校内に起きる問題を解決していくところから物語は始まります。
冒頭部だけ読むと学園物というイメージを抱きますが、主人公の問題解決の手段を知っていくうちに全く違った側面を見せ始め、下巻では圧巻とも言える筆力によってとある一夜の出来事を描ききります。
主人公の内面の掘り下げ方や伏線の回収の仕方は硝子のハンマーや青の炎を彷彿とさせますし、下巻は新世界よりの一晩の冒険を思い出させます。
ただ主人公の思考法に触れているとは言え下巻の展開へ至る結論の出し方が少し飛躍しすぎな気はしますし、読後感も決してよいとは言えません。
ただ貴志さんのファンという心理が働いてしまいますので、飛躍があっても文章力はさすがと唸らされますし、この後の展開を色々と想像させる終わり方は個人的には好きです。
読んだ後に爽快感を感じるわけではありませんので、正直万人にはお勧めできませんが、貴志ワールドを少しでも知っている人なら買って損はないと思う一作です。