折れた竜骨

米澤穂信さんがいつもの作風とは違ってファンタジーに挑戦した意欲作です。
中世の魔法と剣の世界に生きる人たちの中で国王殺しが起こり、その犯人は誰かというのが大筋ですが、魔法が絡んでくるだけあって真犯人は分かっているもののその真犯人に魔法で操られて殺したのは誰かという一風変わった趣向を取り入れています。
確かに伏線はしっかりと張り巡らせながらも回収し、真相にも驚かされます。
ただ、これをこの世界観で描く必要があったのかというと少し疑問を感じざるを得ません。
世界観を生かしながら真相に迫っていく様は描かれていますし、途中にある戦いの描写などは上手いと思うのですが、いまいち入り込めない気がします。
いつもの作風を読み慣れているからかもしれませんが、迫ってくるものがないというか。
日常の謎でない部分に挑んだという見方は出来ると思いますが、やっぱり日常の謎を描いて欲しいなと思います。