空中ブランコ

今年の春先、雨上がり決死隊の宮迫とサトエリが主演で舞台化されていて見に行ったことはありますが、先日図書館で見かけ手にとってみました。
奇妙な精神科医伊良部が空中ブランコがこなせなくなったサーカス団員や義父のズラを取りたくてしょうがない医者など様々な患者の悩みを聞きながら治す話。
といっても伊良部自身はあまり効果のある治療法は提案せず、患者本人が悩みながら解決策を見つけることで解決していきます。深く考えることなく楽しめる作品。女流作家が患者の話がありますが、それは奥田さん自身の悩みを書いているかのよう。

奥田さんの作品ではこれとは全く作風が違いますが、最悪という話が大好きです。
中年の工場経営の自営業社長、女性銀行員、半端な不良の全く接点のない3人の日常生活を描きながら、最後には3人の物語が絡まり合ってラストに向かっていくのですが、この中年の工場経営の自営業社長のエピソードが秀逸。
受注増を充てこんで借金をしてまで新機械を入れたのに受注は増えなかったり、騒音問題が起きそれにクレームをつけに来た人間を怪我させたりと見ていて本当に最悪と思う内容ばかり。
うちは親が工場ではないものの自営業をやっていたので、その日常が目に浮かびやすく、ページをめくる手が辛いものがありました。それでも先が気になり、読み進めてしまいますが。こちらは伊良部シリーズとは違って深く考えながら楽しめます。読後感は全く違いますのでご注意を。