デパートへ行こう!

真夜中の閉店した後の百貨店にリストラされた中年男、訳ありそうなヤクザ者、家出中の若いカップル、お局に近い女性社員、そしてその百貨店の社長など一癖もふた癖もありそうな人たちが集まって起こる一晩のエピソードを描いた物語です。
話の筋としては面白く、真保さんの筆力もあり、読ませるのですが、如何せん主役級の人物が多すぎるために視点が定まらないので話の展開についていきにくかったりします。
多視点を用いるからこそ、複雑に絡み合った伏線を回収できるという面は確かにあるのでしょうが、読み終わった後に納得感や爽快感が残るかというと少し疑問ではあります。
ドタバタ劇という印象だけが残ってしまい、登場人物を深く書き込めていない気がします。
このミス上位作品が必ずしも名作とは限りませんが、近年真保さんをこのミスの上位で見かけない理由が何となく窺い知れる一作な気がします。